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山中伸弥教授のNature報告

山中伸弥教授(京都大iPS細胞研究センター長)は2日、限られた種類の細胞だけでなく、体のあらゆる種類の細胞をiPS(人工多能性幹)細胞にできる可能性が高いと英科学誌「ネイチャー」で報告したそうだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090702-00000006-kyt-l26

さまざまな細胞でiPS細胞を作製して研究することが、実用化につながると強調している。

あらゆる種類の細胞からiPS細胞を作製することができれば、元の細胞に戻すことがやりやすくなり、神経細胞やガン幹細胞の細胞等に分化させることも容易になる可能性が考えられる。

 iPS細胞は遺伝子を4種類導入する方法、遺伝子を2種類以下で誘導できる方法、
遺伝子と化学物質を使う方法、細胞質のタンパク質を導入する方法等、さまざまなiPS細胞作製法が報告されている。その中で最も効率がよいのは山中伸弥先生の4種類の遺伝子導入だが、この場合、ガン化するという問題があった。

また、もっとも効率のいい方法であっても、プレート1枚(100万個位の細胞)からせいぜい数個〜数十個がiPS細胞になっていたのではないかと記憶している。

レトロウイルスを使う場合、ほとんどの細胞に感染するので、100万個細胞があれば、数十万個がiPS細胞になりそうなものだが、そうはならない。この点が不思議ではあった。もちろん、遺伝子が導入された位置によっては染色体上の位置効果(ポジションエフェクト)によってサイレントになるケースはある。

しかし、通常は染色体のオープンな場所にインテグレートするはずなので、サイレンシングされる可能性はそれほど高くはないのではなかろうか?

そうしたことを考え合わせると、ごくわずかな割合でしかiPS細胞にならないのは説明が難しい。さまざまな細胞になれる「多能性」が十分備わらない細胞も多く、原因は分かっていない。

 山中伸弥センター長は、iPS細胞になれる少数の細胞が最初から決まっているという考え方を、細胞の種類によらずiPS細胞の作製効率が向上する選別手法があることなどから「矛盾がある」と否定しているという。しかし、最初の細胞集団の状態が均一かどうかはわからない。Primary cultureの段階で細胞の核内因子に多様性が出ることは十分考えられる。

また、ある特定の場所に遺伝子が導入された場合だけiPS細胞になるという見方も否定しているという。だが、近くに強力なサイレンサーとかエンハンサーがあった場合、発現量に影響を与えるので、いい場所に入った場合にiPS細胞になるという考え方もあるのではなかろうか?これはメチル化とも関連している。

 山中教授は、わずかしかiPS細胞にならない理由について、導入した遺伝子の働きやDNAの働きを限定している「メチル化」を制御する必要があるが、現在はその技術が確立していないため「偶発的にしかならない」と説明した。メチル化されていればいくらiPS誘導遺伝子を導入してもiPSになるための遺伝子が発現しないので、iPSにならない、ということなのだろう。

iPS細胞を作成するためには、あらかじめiPS細胞になるために必要な遺伝子のメチル化を外しておく必要があるのだろう。そのための遺伝子がまだわかっていない、ということなのだろうが、メチル化遺伝子は多数知られているので、いずれこれもわかる時が来ると思われる。

 山中伸弥センター長は「病態の解明や薬剤の探索、毒性試験への応用、将来の移植治療など、それぞれの用途によって、どの細胞からどのような方法で作るか、ベストな組み合わせを検討することが大切だ」としている。確かに、薬剤の探索とか、毒性試験等試験目的でiPS細胞を使いたい場合であれば、ガン化は問題にはならない。

必要性に応じてiPS細胞の作製方法を選択するのは理にかなっていると思われる。





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