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ノーベル物理学賞に南部陽一郎、小林誠、益川敏英

ノーベル物理学賞は

南部陽一郎名誉教授(87、米シカゴ大)=米国籍
小林誠名誉教授(64、高エネルギー加速器研究機構(高エネ研))
益川敏英教授(68、京都産業大理学部)

の日本人3人に決まった。

自発的対称性の破れの発見と、CP対称性の破れを説明する素粒子理論を構築した功績という。湯川秀樹博士の流れを組む坂田昌一さんの弟子が受賞したことは日本の素粒子論が世界でも通用することを証明したといえよう。日経平均株価が1万円を割り込み、景気の先行きが暗くなっている時に明るいニュースではある。

高度成長時代は品質管理と安い賃金で欧米人の発明品を安く、高品質に作って販売して成功した。そのためか日本人は独創性がないように言われることも多いが、素粒子理論については日本人の頭の構造は欧米人にも引けを取らないことが証明された。日本人の独創性に自信を持っていい。世界最高の天才の頭脳を日本人も持ち合わせている。物理以外の他の分野でも十分戦えるのではないか?

それにしても、京大の湯川秀樹、朝永振一郎氏の流れはまだ生き続けているのだなぁ、と感心した。京大の湯川博士のノーベル賞記念館にも行ったことがあるが、ああいう世界があるということを現実に意識できるところがあり、いつでも行けるのが京大の強みなのかも知れない。いわば立体版の宝地図、ドリーム・マップ、ビジョン・ボードと言えようか。建物全体がノーベル賞のイメージと雰囲気を感じさせるところである。

もっとも、今は東大でも小柴昌俊元教授のノーベル賞のメダルやイラストを東大理学部1号館の1階に飾っているので、いつも皆見ているのだが。なので、いずれ東大からもノーベル賞がまた出ることだろう。しかし、できれば京大のように、研究室そのものを建物として残しておけばもっとイメージングの効果があるかも知れない。

次は、ビルゲイツやスティーブ・ジョブズ、そしてラリー・ペイジ、セルゲイ・プリンを超えるベンチャー起業家が日本から出てきて欲しいものだ。


以下はヤフーニュースの記事である。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081007-00000018-maiall-soci

スウェーデン王立科学アカデミーは7日、08年のノーベル物理学賞を、米シカゴ大の南部陽一郎名誉教授(87)=米国籍▽高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)の小林誠名誉教授(64)▽京都産業大理学部の益川敏英教授(68)の日本人3人に授与すると発表した。素粒子の理論で先駆的な役割を果たしたことが評価された。南部氏の受賞理由は、物質の最小単位である素粒子の「自発的対称性の破れの発見」。小林、益川両氏は「CP対称性の破れの起源発見」で、CP対称性の破れを説明するために、物質を形づくる素粒子クォークが少なくとも3世代存在することを予言し、後に実証された。素粒子の世界に存在する「破れ」と呼ばれる非対称性の理論化に取り組んだ3氏の業績は、理論物理学の発展に大きく貢献、初めての日本人3人同時受賞につながった。


 日本人のノーベル賞受賞は、02年の小柴昌俊・東京大特別栄誉教授(物理学賞)、田中耕一・島津製作所フェロー(化学賞)以来6年ぶりで、3氏を含め受賞者は計15人、物理学賞に限ると小柴氏に続き計7人となった。授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれ、賞金1000万スウェーデン・クローナ(約1億4000万円)は南部氏に半分、残りの半分を小林、益川両氏に贈る。

 左右対称の図形は、左右を入れ替えても形が同じ。物理法則でも、一つの状態をほかの状態に変えても不変であるとされる。

 しかし、南部氏は60年代、素粒子の世界でこのような対称性が破れる「自発的対称性の破れ」という素粒子に関する基本概念を発表した。これは、極低温で電気抵抗がゼロになる超電導現象を素粒子分野に応用し、素粒子の対称性は失われることがあるとした理論だ。現在の素粒子研究の多くは、この概念を出発点に理論を展開しており、物質の質量の存在を説明する基礎になっている。

 一方、小林、益川両氏は粒子と反粒子(質量が粒子と同じで電荷が反対)の数が異なる時に起きる「CP対称性の破れ」を理論的に説明するため、当時3種類しか存在が確認されていなかった素粒子クォークが3世代6種類あることが必要だとする「6元クォーク模型」を考案。両氏の名字をアルファベット順に並べて「小林・益川理論」と呼ばれた。

 小林・益川理論は当時の理論物理学の常識を覆す理論だったが、その予言通り、77年までに4、5番目のクォークの存在が実証され、95年には6番目のトップクォークの存在が確定、理論の正しさが証明された。

 南部氏は戦後まもなく渡米した頭脳流出組で、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹、朝永振一郎の両氏(いずれも故人)に続く日本の素粒子論研究者の第2世代。益川、小林両氏は名古屋大理学部の先輩、後輩で、湯川博士の協力研究者だった故坂田昌一博士門下で素粒子論を学んだ。この受賞は、日本のお家芸とも言える素粒子論の世界で、第2、第3の世代が世界にその実力を改めて証明したともいえる。